企業が重要目標を改善しながら、高齢化する労働力から最適な成果を得るには

2012年はベビーブーム世代、いわゆる1946年から1964年の間に生まれた人々のリタイヤが始まる前兆の年と言われていました。でも、人々の寿命は伸び、前の世代よりもずっと健康でいられるようになりました。徐々に減額される年金と、不景気や低金利に左右される株式市場が複合的に作用した結果、財政難から、人々は70代まで働き続けることを余儀なくされています。同時に、欧州の多くの国々や中国では出生率が低下しており、雇用者は極めて大きなスキル不足の可能性に直面しています。欧州や中東、アフリカなどの地域では、まさにリタイヤする労働者に代わる30代から40代の人が不足しているのです。

こういった状況の結果として、統計学者は、2020年までにドイツの労働者の45%が50歳以上になると推定しています。これは現在の数字から25%の増加です。スイスでも、2012年10月に発行された報告書において、退職年齢をはるかに過ぎた古参の労働者が職場に残る傾向が増えていることが取り上げられました[1]。欧州の他の国々でも状況は類似しています。事実、欧州労働安全衛生機構(EU-OSHA)は、2010年から2030年の間に55歳から66歳の年齢グループが約16.2%増加すると推定されるのに対し、他のすべての年齢グループはこれに従って減少すると予測しています[2]。

欧州だけではありません。米国でも、2009年9月から2012年9月の間に55歳以上の労働者数が350万人増加しました[3]。日本やシンガポール、韓国の雇用者も同様の状況にあり、労働人口の高齢化によって生じる課題に備えなければならない時期を迎えています。

Managing an Ageing Workforce

課題とは何か

 2020年の労働人口は、明らかに今日とは全く違ったものになると予想されています。経営者層は年齢のいった労働者のスキルを保持しようと意欲的ですが、高齢の労働人口が提起する具体的な課題に対処するためのベストな手段を考案しなければなりません。これらの課題とは、作業場の設計に関する問題、つまり、上級の職務的位置を独占させることなく、年配の労働者に大部分の技能を構築させる、医療関係の給付を導入する、技能の不足を防止するため、年配の従業員から知識を移転させるための戦略を構築するなど、極めて多様です。大量の従業員グループが似たような時期に退職に近づくことによって生じる技能の損失は、あらゆる事業に大きな影響を及ぼすことになるのです。

労働寿命を伸ばすためのカギ-職場における安全と衛生

年齢と疾患は切り離せないほど関連が深く、多くの疾患は職場での病気やケガなど、生活様式に関わる問題から生じます。結果的に、技能のある年配の従業員に作業を継続してもらうには、職場の衛生と安全が極めて重要だということになります。これを強調的に示しているのがスイスと欧州連合による調査です。EU-OSHAによる「職場の衛生と安全に関する欧州世論調査」によれば、87%の人が、リタイヤするまで長く働くためには良好な職場の安全性と衛生が極めて重要だと考えていることがわかっています[4]。しかしながら、ユーロバロメーター調査の結果は、これらのうち多くの人が自分達の職場の条件は高齢まで働きやすい環境ではないのではないかという危惧を示し、調査対象の人の半数以上が、自分達の職場は実際に年配の従業員のニーズに十分に適応してきたとは言えないと考えているのです。

 スイス連邦の委託を受けた調査でも同様の所見が得られています。この調査の結果は、企業は特定領域における年配の労働者の価値と技能は認識していても、年配の労働者をまさしく退職年齢まで、あるいはそれ以降もとどまるように働きかける整合性ある人事的方針は適用していないことを示すものでした[5]。

 「企業は年配の労働者に対する手当てを考慮すべきです」と語るのは、デュポンサステナブルソリューションのプラクティスリーダー、ピーター・オーグスティンです。「企業がこういった従業員が長年かけて身につけてきた知識や技能を維持したいのであれば、これらの人を支える具体的な手当や方針を確立しなければなりません。」

職場において年配の従業員の安全と衛生に備え、これらを徹底するための方法

1. 適切な職場での態度を通じて年配の労働者の価値を認識する。
2012年は「アクティブエイジングと世代間連帯のヨーロッパ年」と呼ばれていました。「アクティブエイジング」とは、「仕事寿命を伸ばし、退職年齢を遅らせることで、年配の人々がアクティブに生きるよう働きかけること」だと説明されています。

EU-OSHAは、「態度の変革を通じ、年配の労働者に対して公正かつ適切な態度を創造していくよう」推奨しています[6]。企業は、年配の労働者が建設的に働ける雰囲気を確立するよう努力しなければなりません。時代遅れの態度や「年齢差別」は、これらの人々のキャリアにマイナスの影響を及ぼし、早期に退職せざるを得ない状況に追い込み、その昇進を拒んだり、学習や研修の機会を排除してしまう恐れがあります[7]。職場を年配の労働者に適合させていくには、ある程度の融通性と、どこで、どのようにこれらの人々の技能の大部分を活用していくかの再考が必要なのであり、年配の労働者に対する誤った信念や否定的な態度は、企業に価値の高い人的資源を失わせかねません。

2. 健康と健康的なライフスタイルの推進

スイス連邦が実施した調査によれば、退職年齢後に仕事を続けるかどうかの決定を左右するのは経済的な問題だけではなく、健康上の問題が大きな影響を及ぼします[8]。

年齢を重ねるということは平等なプロセスではなく、誕生日が同じ2人の人でも身体的、精神的状態が大きく異なる可能性があります。調査の結果は、定期的に運動をする人は45歳から65歳の間に身体能力にあまり変化がないことを示しています。つまり、運動をしない45歳の従業員では、運動をする20歳年上の従業員よりも不健康な場合があるのです[9]。

すなわち、職場における「年齢管理」は、常に健康上、安全上の問題の防止に重点を置かなければなりません。

企業における安全と衛生の専門家は、年齢もしくは労働条件によって誘発される健康上の問題を特定し、取り扱うことのできる予防的措置を講じる必要があります。また、スポーツ活動や健康な食事、飲酒、回復、睡眠などを奨励することで、健康的なライフスタイルを推進していかなければなりません。

デュポンの労働安全衛生の専門家は、健康診断や回復力、人間工学に関する情報などのサービスを提供しています。また、デュポンでは、全社を通じて従業員のスポーツ活動を奨励し、助成しているほか、多くの施設が「ウェルネスデー」を企画し、従業員の運動や食事、ライフスタイルの価値に対する意識向上に努めているのです。


3. ワーク-ライフバランスの奨励

職業衛生のエキスパートは従業員や雇用者と密接に連携し、仕事のタイプや時期を年齢や身体状態に適応させていかなければなりません。

チームの中で、責任者は、健康や障害、性別といった、絶えず変化する無数の問題を踏まえ、チーム内の作業バランスを常に適応させていくことになります。多様な労働人口を管理する際には、年齢も考慮すべき問題の一つでなければなりません。退職年齢後の労働に関するスイス連邦の調査結果によれば、仕事を続けるかどうかの個人の決定に影響を及ぼす要素は労働時間の融通性です。例えばデュポンでは、労働時間や場所の融通性、すなわち健康なワーク-ライフバランスを実現できるプログラムを確立しています。

こういった適応性のある職場のポリシーが、年配の労働者が抱えるニーズに適合し、これらの人々が仕事量に対処するための支援を実現するのです。


4. 従業員のキャリア全体を通じた継続的な教育と研修

スキルと能力を絶えず更新していくためには、実地と職場外での両方の研修を計画立案し、若い労働者と年配の労働者の異なる学習経路に適合させなければなりません。従業員のキャリア全体を通じた定期的な研修の実施によって、企業が従業員の精神活動を維持していくことができれば、これらの人々は職業人生の全期間にわたって学び続けていくことになります。「多くの雇用者は現在でも、20年の職業経験を持つ、若くて活動的な従業員を探し求めています。でも、現在の労働市場がそのような労働力を供給することはできません」とオーグスティンは断定します。「年配の労働者のスキルを堅持できるとしたら、そうしない理由はありません。」


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参考資料


[1] Toujours plus de Seniors Travaillent, Tribune de Genève, 8 Octobre 2012, http://www.tdg.ch/vivre/societe/toujours-seniors-travaillent/story/16917980

[2] Promoting active ageing in the workplace, EU-OSHA, http://osha.europa.eu/en/publications/articles/promoting-active-ageing-in-the-workplace/view

[3] For Older Workers, Here Is Where the Jobs Will Be, The Wall Street Journal, October 22, 2012 http://online.wsj.com/article/SB10000872396390443854204578060534215611750.html

[4] Working better for longer, European Agency for Safety and Health, September 25th, http://osha.europa.eu/en/publications/articles/active-ageing-working-better-for-longer/view, p.2

[5] “Départ à la retraite et démographie: une étude révèle une tendance et une disposition à travailler plus longtemps”. Press Release, Swiss Confederation, October 8th, 2012 http://www.news.admin.ch/dokumentation/00002/00015/?lang=fr&msg-id=46218

[6] EU-OSHA, Promoting active ageing in the workplace, p. 67 Safe and Healthy, a Guide to Managing an Aging Workforce, Government of Alberta, 2006 http://alis.alberta.ca/pdf/cshop/safehealthy.pdf, p. 6

[8] “Départ à la retraite et démographie: une étude révèle une tendance et une disposition à travailler plus longtemps”. Press Release, Swiss Confederation, October 8th, 2012 http://www.news.admin.ch/dokumentation/00002/00015/?lang=fr&msg-id=46218

[9] Safe and Healthy, a Guide to Managing an Aging Workforce, Government of Alberta, 2006 http://alis.alberta.ca/pdf/cshop/safehealthy.pdf, p. 15

Bibliography

  • Active Ageing and solidarity between generations, a statistical portrait of the European Union 2012, Eurostat http://epp.eurostat.ec.europa.eu/cache/ITY_OFFPUB/KS-EP-11-001/EN/KS-EP-11-001-EN.PDF
  • http://ec.europa.eu/public_opinion/archives/ebs/ebs_378_en.pdf
  • Promoting active ageing in the workplace http://osha.europa.eu/en/publications/articles/promoting-active-ageing-in-the-workplace/view
  • Working better for longer, European Agency for Safety and Health, September 25th, http://osha.europa.eu/en/publications/articles/active-ageing-working-better-for-longer/view
  • Ageing Workers, http://osha.europa.eu/en/priority_groups/ageingworkers EU-OSHA backs European Year for Active Ageing, Press Release Oct 1st, 2012 http://osha.europa.eu/en/press/press-releases/eu-osha-backs-european-year-for-active-ageing
  • Toujours plus de Seniors Travaillent, Tribune de Genève, 8 Octobre 2012, http://www.tdg.ch/vivre/societe/toujours-seniors-travaillent/story/16917980
  • Safe and Healthy, A guide to managing an Aging workforce http://alis.alberta.ca/pdf/cshop/safehealthy.pdf