強烈な熱にばく露した時に Nomex® の性能を支える設計

先ごろ、消防局長、衣服メーカー、製織企業などの識者を招いて開催された個人用防護装備 (PPE) の検討会で、最も恐れられる危険であるフラッシュオーバーの発生時には、衣服の保護性能に関して時間が重要であることが明らかになりました。

PPE の防護過程では時間が肝要な役割を果たすため、消防士にとっては、消火活動中および活動後に防火服がどのように機能して着用者にどのように作用するかを認識し、随時適正な行動によって適切に防護されるようにすることが重要です。

広く認識されているとおり、消防士のキャリアにおいてフラッシュオーバーやバックドラフトに完全に飲み込まれるリスクはごくわずかです。しかし、こうした事実にもかかわらず、生地や衣服メーカーには今なお万が一の事態に対応する素材や衣服を設計して製造することが求められます。

その一方で、こうした防護服を開発すれば、往々にしてヒート ストレス、低通気性、低耐摩耗性など別の問題を伴う衣服が製造され、修繕にかかるコストが増大したり、見た目の劣化が早まったりします。 元消防士で、現在は DuPont のコンサルタントを務める George Farenden 氏は、この 2 つの問題を両立させる 1 つの方法は、生地の製造時にパラ系アラミドとメタ系アラミドを正しい割合で混用することで、混紡率が適切であれば、たとえ極端な状況でも着用者を防護できる一方で、着心地がよく長持ちする材質を製造できると説明しています。 同氏はさらに、「留意すべき重要な点は、もちろん極端な状況に耐えうる生地や衣服を開発することは可能ですが、防護に目を向けるばかりに消防士のことを忘れてはならず、人体の耐性には自然な限界があることを肝に銘じることです」と述べています。

他方、ここ数年の技術開発により、Nomex® と Kevlar® を織り込んだ Hainsworth® TITAN のような生地が作り出されています。こうした製品は、潜在的なフラッシュオーバーやバックドラフトから消防士を守るだけでなく、日常の通気性や快適性も確保します。 Nomex® (生地のメタ系アラミド成分) は、耐熱耐炎性を備えています。 生地内の Nomex® の性能や熱吸収の設計については若干の誤解があるように思われます。 Nomex® が炭化すると、熱が吸収されて防護性のある炭化バリアになるため、熱が衣服を通過して消防士の身体に到達することがありません。 炭化バリアが形成されなければ、熱が身体に向かいます。

衣服の性能の各段階

この衣服の性能には 3 つの段階があり、比較的短時間で推移します。このどれもがフラッシュオーバーやバックドラフトにさらされた消防士を防護する目的で設計されています。 最初の「フラッシュオーバー」段階では、場合によっては 800~1000 度にもなる高熱に衣服がさらされて、大量の熱を吸収します。 この吸収によって Nomex® 繊維が膨張して厚みが増し、伝導性熱伝達が阻まれるため、身体に伝わる熱量が減少します。 熱に反応する Nomex® 繊維独特のこの性能により、熱から防護する貴重な数秒間が生み出されます。 このプロセスの間、アウターシェルの生地や防護レベルに変化はなく、伸縮性が保たれるため、消防士は熱源から退去したり遠ざかったりすることができます。

フラッシュオーバーにさらされた消防士にとって最も重要なことは、衣服の材質に関係なく、一刻も早く安全な場所に逃れて衣服 (上衣と下衣の両方) を脱ぎ捨てることです。 この 2 番目の「退去」段階で、Nomex® は冷却するまでしなやかな伸縮性を維持するため、身を守る貴重な数秒間が生み出されます。 この段階で破断が生じることはありません。 しかし、どのような構造の防火服も熱を保ち続けるため、ゆっくりと進行する伝導性熱伝達による熱傷を避けるためには脱ぎ捨てる必要があります。

最後の「回復」段階では、消防士が外衣を脱いで熱を冷まし、身体を回復させます。 同様に、防火服も徐々に冷却し、残りの、依然として相当量の熱を放出します。 Nomex® 繊維に熱が吸収されると、冷却プロセスで Nomex® 繊維が硬化するため、この時点で折り曲げると繊維が折れたり砕けたりすることがあります。これを「破断」といい、昨今の自動車の材質が衝撃を吸収して砕けるように設計されているのと同じ原理です。 たとえば、自動車は事故後もそのデザインを保ち、格好良く見えるようには設計されていません。 エネルギーを吸収して砕けることで、運転者を守るように設計されています。 この反応は、DuPont™ Nomex® 製の衣服によく似ています。 一定の場合には、エネルギーを吸収して消防士を守るという役目を果たした衣服が、その後冷却時に砕けることがあります。 つまり、衣服もフラッシュオーバーから防護するように設計され、フラッシュオーバー後に格好良く見えるようには設計されていません。 砕けているように見える場合は、防火服が熱を吸収し、期待どおり機能を果たしたことの証です。 ここで何より重要なことは、この特性が生じるが、衣服が強烈な熱から脱し、生地が冷却された後のみである点です。

検討会で識者に、「実際のフラッシュオーバーやバックドラフトの最中に衣服が駄目になったところを見たことがありますか」という質問が上がりました。 そして、制御下のマネキン試験を除きこの特性を見たことがないという意見で一致しました。

EN 469 に準拠した衣服を購入する際には、さまざまな点を検討します。たとえば、消防士が直面するおそれのある危険のうち最も重要で可能性が高いものは何か、そして、快適性、ヒート ストレスに対する防護、動きやすさ、そしてもちろん今日の予算が限られた状況では耐久性などの重要性を踏まえたうえで、どの程度の防護を要するかなどを検討する必要があります。

Nomex® は、防護を念頭に設計された繊維で、世界各地の消防士に選ばれています。 DuPont では、Nomex® パートナーの協力の下、消防士が任務を安全かつ快適に遂行できるように、複雑な条件下の消防士を防護する生地および衣服を開発する広範な研究を続けています。

Hainsworth® は、A W Hainsworth & Sons Ltd の登録商標です。